Erdbeere ~苺~ 恋ってやつを教えてやるよ 忍者ブログ
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2012年11月18日 (Sun)
桐生寄り/甘

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1.恋ってやつを教えてやるよ


朝早く、私は仕事のために神室町へと繰り出した。
最近平和だったんだけど、あの桐生一馬が帰ってきてからは大忙し。

私は桐生一馬の専属情報屋だ。
どうしてそうなったか、なんて言われると長い話になる。
ここでは運命だ、とだけ言って置こう。

正直、この運命には感謝している。
毎日がスリルで溢れていて、桐生と居ると全然飽きないからな。

そして今日も、アイツら絡みの仕事。


「おーい。来たぜ・・・って、なんだ。すげぇ人数じゃねぇか」


旧セレナに足を踏み入れた私は、その中に居た人間を見て驚く。

伊達さんに呼ばれたから来たんだけど、まさかこんなに居るなんて。
カウンターに座る桐生、秋山、谷村を順番に見回し、それから桐生の隣に腰掛けた。


「勢揃いしちゃって・・・。仕事頼みたいって聞いたんだけど?」
「あぁ。そのことで俺達も呼び出されたんだ」
「ふぅーん・・・。じゃあ、伊達さん。話の前に、レモンハート1杯くれ」


挨拶代わりに1杯、伊達さんにお酒を頼む。
こんな人数が居る仕事だ。どうせ長話になるに決まってるからな。

それにしても、こんな大人数に仕事を頼むなんて珍しい。
というか、今までには無かったことだ。
あっても桐生と私がペア組んで、とかぐらいだったのに。


「ほらよ」
「さんきゅー。んで?今日はこんな大人数で何のお仕事?」
「どっちかっていうと、伊達さんじゃなくて・・・俺からの仕事なんだよ、あけ
「谷村からの?」


谷村が差し出したのは、最近の事件をまとめた1枚の紙。
大量の情報量の中に、ひときわ目立つ赤い印が付いている。

―――連続強姦事件。

さすがの私でも、あまり見たくない事件名の一つだった。
しかも現場はほとんど神室町で、金持ちのお嬢様ばかりを狙っている事件なのだという。


「お嬢様狙い?金でも狙ってんのか?」
「いや、金は奪われちゃいねぇらしいぜ」
「伊達さんの言う通り、金はとられてない。ただその狙われた女性の誰もが、神室町やその周辺のホストを目当てに遊びに来たお嬢様なんだと」


谷村の説明を聞きながら、私はその紙をまじまじと眺めた。
変な奴だな。お嬢様を狙うのに金を奪わないとは。

高貴な女性が好き、とか、そういう変な性癖の持ち主か?
金持ちのお嬢様っていえば、穢れを知ら無さそうってイメージもある。


「また悪趣味な事件だな・・・。んで?この事件がどうしたんだ?」
「お前たちには、この事件の犯人を逮捕するため・・・おとり捜査の協力をしてほしいんだ」
「おとりぃ?私たちはその護衛か?」
「いや・・・」
「・・・ん?」


私の言葉に、皆の視線が一斉に私の方を向いた。

・・・は?まさか私にお嬢様役やれってこと?
護衛ならまだしもお嬢様役なんて勘弁と、両手を上げて降参のポーズを取る。


「待て待て。私は護衛ならやるぞ?でもまさかおとりをやれなんて・・・」
「そのまさかだよ、あけ。伊達さんが俺に、お前を推薦したんだ」
「おい伊達さぁん?」


飲んでいたお酒を置き、思いっきりドスの効いた声で伊達さんを呼んだ。
今にもグラスをぶん投げそうな私を、秋山が優しく宥めにかかる。

いや、これは一発殴らないと気が済まない。
よりにもよってお嬢様役なんて、何考えてんだこいつは!


「どういうことだよ・・・?」
「ま、まぁ待てよあけ。落ち着け、な?」
「落ち着けるか!私は護衛ならするが、お嬢様になるなんて無理だ!」
「そこを何とか頼む・・・!お前さんは情報屋だろ?いつもキャバ嬢に扮して情報とってるじゃねぇか。その時みたいにやってくれりゃいいんだよ」
「あのなぁ・・・キャバ嬢と高貴なお嬢様じゃ、わけが違うんだって」


私がキャバ嬢を演じることが出来るのは、キャバ嬢を良く近くで見てきたからだ。
裏の世界に居れば、嫌でもキャバ嬢や美人局の女性を見ることになる。

そこから観察してマネているからこそ、バレない完璧な演技が出来るわけで。

観察も何もしてないものを演じるなんて、出来るわけがない。
しかもお嬢様なんてもの、私とどれだけの差があると思っているのだろうか。
礼儀正しくってのがまず難しいのに、無茶すぎるんだよ。


「仮に姿をごまかせても、態度でお金持ちって感じを出せないと思うぜ。お嬢様なんて身近にいなかったしな」
「そこらへんはほら、秋山や桐生をお連れとして見立ててだな・・・。危なくなったら、二人に教えて貰えばいいだろ」
「あー?・・・まぁ、お付きがいれば確かにそれっぽくは見えるかもしれねぇが・・・なんつーかその。この二人もあんまりそういう礼儀系に詳しいとは思えねぇんだけど?」


危なくなったらって言っても、むしろコイツらが喧嘩に走ってしまう可能性もある。
難癖ありすぎるメンバーと作戦に、私は大きなため息を吐いた。

普通の人の依頼だったら、速攻ぶった切って帰ってるんだけどな。

伊達さんは前からの付き合いだし、秋山も桐生も乗り気みたいだし。
・・・ぶっちゃけ、イエスかハイの選択肢しか残されていないような気がするのは私だけだろうか。


「な、頼む。お前の身の安全は、桐生や秋山だけじゃない。俺と谷村だって保障する」
「・・・・具体的に、何すればいいんだよ」
「やっぱり引き受けてくれるか!?お前ならやってくれると思ってたよ、あけ!」
「だー!まだ受けるっつってねぇだろ!何するかだけ聞くんだ!!」


バンッと勢いよくテーブルを叩くと、また秋山が私の事を宥めた。

大体、なんでお前等は落ち着いてるんだよ。
私のお付き人になるんだぞ?嫌じゃないのかよ?


「とりあえず、あけには1週間ぐらい、わざと人目に付く場所で遊んでもらう」
「遊ぶ?」
「よく金持ちがやってるような、豪遊だよ。金は犯人逮捕でき次第警察から戻されるから・・・今は秋山から借りる作戦だ」
「豪遊って・・・」
「鞄買うでも良い、ホストに通うでも良い。とにかく何でもいい。桐生と秋山を連れて歩きさえすれば、何しても構わない」


伊達さんの真剣な表情が、私の心を揺らす。
そんな表情されたら、私が断れないのを分かってるんだ。


「・・・・はぁ。分かった分かった。引き受ける」
「本当か!?ありがとう!」
「おい!撫でるなっ!!・・・このっ!!」
「ごふっ!?」


諦めて首を縦に振った私を、伊達さんが喜びながらぐしゃぐしゃと撫でつける。
撫でられるのが嫌いな私が咄嗟に拳を握り、伊達さんの顎にストレートをかました。

悲鳴を上げて伊達さんが吹っ飛ぶが、気にしない。
伊達さんを殴って少しすっきりした私は、そのまま桐生達に向き直る。


「んで?お前等は私のお付きになるわけ?」
「んー、そうだね」
「あぁ。お前がヘマしないように見ててやるぜ」
「・・・どっちかっていうと、お前等の方がヘマしそうなんだけどな・・・」


喧嘩っぱやい桐生。絡まれやすい秋山。
二人を交互に見ていると、頭が痛くなるのを感じた。

とにかく、やると決めたらさっさと実行に移すまでだ。
椅子からひょいっと立ち上がり、蹲る伊達さんを無視してカウンター内に入る。
そして空っぽになったグラスを流し台に置き、蹲る伊達さんを覗き込んだ。


「伊達さーん?んで、私はどうすればいいんだ?」
「あ、あぁ・・・とりあえずお前さんは、あの部屋にある服を選んで着替えてくれ。桐生と秋山も着替えさせるから、後はお前等に任せる」
「任せるって・・・。ま、いいや。もし犯人を捕まえることが出来たら、谷村か伊達さんに連絡すればいいんだな?」
「あぁ」


凄くめんどくさい。
これが終わったら、たっぷり二人から礼を搾り取ろう。

渋々作戦内容を呑んだ私は、着替えるためにセレナの奥の部屋に向かった。
いつも桐生達のアジトとして使われているそこに、大量のドレスや服が重なっている。


「うわ、これから選べってか・・・」


伊達さんのお嬢様っていう感覚を疑いたくなるほど、派手めな衣装が部屋を埋め尽くしていた。

こういうのは逆に、お嬢様という人ほど清楚で静かな恰好をしているものだ。
服の海からなるべく清楚そうな服を見つけ、それを身に着けてみる。

白いワンピース。薄茶色のカーディガン。
か弱くて高貴なお嬢様にはぴったりなこの服も、私が着ると全然映えない。
やっぱ女っぽいのは苦手だと思いながら、ちゃっちゃとメイクも済ませた。


「んー、こんな感じか・・・」


いつものメイクは、キャバ嬢用だからな。
がっつり濃く塗っちゃうから、あれだと清楚な感じは一切出ない。

清楚な感じになってるかは分からないが、今日のは私なりに自然な女性をイメージしてやってみたつもりだ。


「おーい。こんな感じでいいかー?」


部屋から出ていくと、執事服に身を包んだ桐生と秋山が目に入った。


「お、あけちゃん。俺達もちょうど着替え終わっ・・・・」


二人が私の方を振り返り―――そして止まる。

え?何?もしかしてダメだった?
二人の視線が痛いほど突き刺さるのを感じ、私は自分の姿をもう一度確認し直した。

特にヘマしたところは無いと思うんだが。
あ、あれか?服よりメイクがおかしいとか?


「な、なんかおかしいか?」


ずっと何も言わない二人に、思い切って尋ねてみた。
その言葉に二人は顔を見合わせ、それから息を吹き返したように喋りはじめる。


「良い!凄く良いよあけちゃん!本当にお嬢様って感じがするよそれ!」
「秋山に言ってもらえるなら本当っぽいな・・・」
「前に見たキャバ嬢の姿より、そっちの方が可愛いぜ」
「私にとっては嬉しくない褒め言葉だな、桐生。分かってて言ってんだろ」


可愛い、とか。綺麗、とか。
そういう言葉は、どうも苦手だ。

これ以上からかわれたらたまらないと、私はすぐにセレナの入口に避難した。
作戦決行は今すぐ。こういうのは早ければ早い方が良いんだろ?
逃げるようにセレナを飛び出す準備をすれば、桐生と秋山が楽しそうに私の後を追う。


「は、早く行くぞっ!」
「駄目だよ、あけちゃん。外ではきちんと女性らしく・・・ね?」
「私を誰だと思ってんだよ。・・・やれるだけやる。任せろ」
「じゃあ、行ってくるぜ、伊達さん」
「あぁ。しっかりあけを守ってやってくれよ。・・・頼んだぜ」


こうして、私たちの謎のおとり捜査が始まった。


















1日ってこんな長かったっけ。
そう思えるほど、お嬢様として偽るのは精神的にきつかった。

口調も変えなくちゃいけないし、本来好きなお酒もたばこも出来ない。
危ない路地裏なんてもっての他だ。
だから休憩もカフェやおしゃれなバーだけ。本当に辛い。

なのに私の両側を守る二人は、どこか楽しそうだった。
桐生も秋山も、意外とこういうのが趣味なのか?と疑ってしまうほどだ。


「ねぇ、桐生さん」
「どうしました?あけさん」
「・・・・なんで、そんなに楽しそうなのよ・・・」
「何のことでしょう?」


ああ、普段の桐生より、声が楽しそうなのが分かる。
色々と歩き回って目立つ場所を遊んできた私は、沈んできた日に小さくガッツポーズした。

これで、やっと家に帰れる。
そう思っていた私に、容赦ない秋山の言葉がトドメを刺した。


「そろそろ日が暮れてきましたね。どうしますか?今夜のホテルは」


・・・そうか。そうだった。
今はお嬢様なんだ。
私が自分のアジトやセレナに帰って、もしそこを見られでもしたら、一瞬で全てが台無しになる。

やるべきところは、きっちりと。
隙なんてものは見せてはならない。

つまり、このおとり捜査が終わるまでは家に帰れない。


「(まじかよ・・・)」


軽く絶望を感じ、本日何度目かのため息を吐いた。

まぁでも、引き受けたのは私だしな。
しょうがないと腹を括り、秋山に良いホテルが無いか尋ねる。


「秋山さん、この近くの良いホテル・・・どこがあるかしら?」
「そうですね・・・っと。このホテルなんかどうでしょう?」
「・・・結構近くなのね。そこにしましょう。こんなに遊んだこと無かったから、疲れちゃったの!」


桐生と秋山の手を掴み、無邪気な性格を装って走り出した。
周りの人たちは私のことを指差し、「どこのお嬢さんだろ?」と噂している。

そういう風に思われてるってことは、少なくともおとりにはなれているみたいだ。
とにかく今は人の目が無いところに行って、休みたいだけなんだけど。


「いらっしゃいませ」
「あ、あの、ここのホテルの部屋・・・空いていますか?」
「本日、空きのお部屋は1部屋のみとなっております」


駆け込んだ先のホテルで言われた、衝撃的な言葉。
他の場所を探しに行く?いやでも、もう歩きたくない。

空いてる部屋はファミリー部屋みたいだし、3人でも問題は無いだろう。
他のホテルに行きましょうか?と尋ねてくる秋山を無視し、さっさとその最後の部屋を借りる。


「でわ、401号室へどうぞ」
「ありがとうございます」


広さより休みを優先した私に、エレベーターに乗り込んだ桐生がデコピンを食らわしてきた。
やっと3人だけになった空間で、私の悲鳴が響く。


「うぐっ!?」
「お前な、さすがに3人共同は駄目だろうが。せめて俺達だけでも別のホテルに・・・・」
「えー、めんどくさいだろ。良いんだって。気にしなくても」
あけちゃんらしいねぇ・・・」


大体、今までもセレナに泊まったりしたんだ。
特に付き合いの長い桐生とは、しょっちゅう色んな場所に泊まっている。

しかも、一緒の部屋で。
別に気になる事なんて無いだろ。
私だって別に、気にしたことなんて無い。

私のことなんて、男だと思ってもらっても構わないしな。


「おー!意外と広いぜ、桐生!秋山!」
「あーあーはしゃいじゃって。こういう所は子供っぽいよねぇ、あけちゃんは」
「うっせぇな。仕事柄、嫌な方のホテルしかいかねぇからさ」
「まぁ、確かにあんまりこういうホテルは来ねぇな・・・」


神室町の人間だったら、あまりこういうホテルを使わないだろう。
ここの人間が使うホテルといえば、どちらかというと危ないホテルの方だ。

ふかふかのベッドに身を投げ出し、疲れた身体を解す。
桐生もさすがに執事服に慣れないのか、上着を脱いで肩を回していた。
っつか、秋山も桐生も似合ってるな。さすが男の中の男達。


「あれ、タバコ切らしちゃったな・・・。ちょっと買ってくる」
「ん?あぁ、行ってらっしゃい」


秋山が煙草を切らしたらしく、入って来たばかりの部屋を出て行ってしまった。

桐生と二人きりの空間。
私はベッドに寝転がったまま、息苦しさの原因だったアクセサリーを外していく。

すると急に、桐生がベッドに近づいてきた。
ゆっくりと私を見つめた後、私の隣に腰掛ける。


「・・・どうした?」


普段と少し様子が違うことに気づき、桐生の顔を覗き込むようにして尋ねた。
桐生はそんな私を見つめたまま、私が外したアクセサリーに手を滑らせる。

乱れた髪。脱ぎかけたスーツ。いつもと違う雰囲気。

少しだけ、心臓がドキリと跳ねた。


「中々似合ってるぜ、そういう恰好」
「ほんとか?まぁでも・・・やっぱ私には合わねぇよ。つか、お前の方が似合ってるぜ」
「お前も少しは、女らしく生きたらどうだ?」
「だーかーらー。私には似合わないって。それに女らしくなれっていわれてもなぁ・・・。物心ついたときからこうだったし、女らしくってのがもう分からねぇんだよ」


私が思う女らしくは、演じないと出ないものだ。
普通の女性は演じる必要もなく、その心を持っている。

それが出来ない時点で、私は女性じゃないに等しいんだ。
でも別にショックじゃない。私は今の状態でも満足してる。
どこか悲しげな表情を浮かべる桐生にそのことを伝えようとした瞬間、ギシリとベッドが嫌な音を立てた。


「・・・・え?」


顔を見上げた先にある、桐生の顔。
何が起きているのか理解できず、咄嗟に上半身を桐生から離した。

な、なんだって言うんだ突然!

どうしてこいつは、私の上に覆いかぶさってるんだ!?


「女らしくなんて、分からねぇって言ったな」
「・・・あ、あぁ、言ったよ」


掠れた声で、確認するように囁かれる。
乱れた髪やシャツが一層色気を醸し出し、嫌に自分が緊張してしまうのが分かった。


「教えてやろうか?・・・俺が、お前に」


“女らしさってやつを”

そう囁かれ、私は反射的に拳を突き出していた。
だが、相手はあの桐生。そんなものが通用するわけも無く。


「っ・・・!!」
「観念しろ」


あっけなく拳を受け止められた上に、両手を縫い付けられてしまった。
抵抗を込めて暴れてみるが、桐生の手はびくともしない。


「意味が分からねぇよ!大体、どうやって教えるって言うんだっ・・・!」
「女が一番女になる瞬間ぐらい・・・分かるだろ?」
「ハッ・・・。まさか私を抱くとか言うんじゃねぇよな?ふざけんなよ。たとえ桐生でも、そんなことしやがったら・・・ただじゃおかねぇぞ・・・!!」


嫌だ。たとえ桐生でも、それだけは。

確かに仕事上、そういう関係を持ちかけたことは何度もあった。
でも私は、一度も身体を許したことは無い。

嫌なんだ、どうしても。

心すらそういう感情を理解したことがないのに、身体だけそういう体験をするなんて。


「・・・・別に取って食おうってわけじゃねぇ」


無意識に怯えていた私を、桐生の大きな手が撫でた。
男らしさの中にある優しさが、また、私の心を惑わせる。


「じゃあ、なんだよ」
「女らしさを教えてやるだけだ」
「それが可笑しいって言ってんだよ!」
「うるせぇなぁ・・・」


グイッ、と。

顎を無理矢理掴まれ、正面を向かされた。
キス出来そうな位置にある桐生の表情に、思わず息が出来なくなる。


「・・・・っ」


あれ、どうして?
どうして私、こんなにドキドキしてるんだろう。

やっぱり桐生ってかっこいいなって思うことはあったけど、こんな風にドキドキしたのは初めてだ。

おかしい。
頭がくらくらしてきて、上手く言葉が出なくなる。


「女が女であることを一番意識する瞬間は、“恋をする瞬間”、らしいぜ」
「っ・・・だ、だから、何だ・・・」
「だから俺が、お前に・・・恋ってやつを教えてやるよ」


恋?
ふざけんな、私がそんなもの。

そんなもの、分かるわけ・・・ない。
分かりたくもない。そう、私はこのままでも良いんだから。


「そんなの、いらな・・・い・・・」
「その割には、顔真っ赤だぜ?あけ
「うるさい。うるさい・・・!」
「覚悟しとけよ、あけ。お前が俺を煽ったんだぜ。今まで我慢してやってたのに・・・」
「意味が分からないっての!」
「いつかそれも教えてやるよ・・・

・・・お前が俺の女になった時に、な」


桐生、もしかして酔ってんのか?
いやでも、お酒飲んでないはずだし。

本気?
・・・本気なわけ、ないか。
こいつはキャバ嬢とも遊んでるし、私なんかよりそっちの方が良いはずだ。

きっと、意地悪な気まぐれ。
秋山が部屋に帰ってくる音を聞いた私は、勢いよく桐生を突き飛ばして部屋の隅っこに逃げた。


「・・・あれ?どうしたの、あけちゃん。そんな隅っこで」
「別に、なんでもねぇ」
「・・・?」


忘れるんだ。
気まぐれな意地悪に付き合ってたら、いくら身体があっても持たない。

それよりも、明日の事を考えよう。
まだ、おとり捜査は続くんだ。
何とか今起こったことを考え事で忘れようとした私は、いつの間にか疲れ果て、ベッドの上で意識を手放した。



















薄らぐ意識の中、聞こえたのは二人の声。
(どうしてだろう。何でまた、嫌な予感がするのかな・・・)
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(龍如/オール・海賊/剣豪)