Erdbeere ~苺~ 3章(4) 牙を剥いた龍 忍者ブログ
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2024年11月15日 (Fri)
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2012年11月16日 (Fri)
3章(4)/ヒロイン視点

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次々と上がる悲鳴。開いていく道。
組員達の中に、私たちを止めれる者はいない。

桐生の後ろから襲い掛かってくる男を、容赦なく足蹴りで吹き飛ばす。
それでも諦めない奴らには、そこらへんに置いてあった花瓶をプレゼントしてやった。

勢いよく投げつけると、悲鳴と同時に花瓶の割れる音が響く。


「っしゃー!」
「お前な・・・危ないだろ・・・。もっと考え「もういっちょ!」
あけ!!」
「がふっ!?」


花瓶を投げ続けて遊んでいたら、いきなり桐生に拳骨を食らった。
せっかく良い感じに蹴散らしてたのに、なんなんだよいきなり。


「邪魔すんなよ!お前も敵か!?」
「無理するなっていう言葉が、理解できねぇみたいだな・・・?」
「・・・・」


周りの状況関係なく、桐生から鋭い殺気を感じて手を止めた。
大人しく花瓶から手を離し、そのままゆっくりと拳を作る。

無言の、威圧。
そして無言の了解。
桐生を敵に回すのは嫌なので、私は大人しく普段通りの戦いをすることにした。

・・・楽しかったのにな、花瓶。

そんなこと言ったらもう一発殴られるような気がして、止める。


「さ、さぁ、ちゃっちゃと終わらせっかー」
「右だ、あけ
「分かってるっつうの・・・!左だ、桐生!」


いくら馬鹿話をしていても、私たちのコンビネーションは崩れない。
お互いがお互いを理解しているからこそ、見えてない位置を教え合い、その位置の敵を殴り飛ばした。

いつの間にこんなコンビネーション身に着けたんだろうな?
自分たちでも分からないぐらい、勝手に身についていたものだ。

桐生の後ろから襲って来ていた奴を回し蹴りで階段に落とし、自分たちもそこから入口へと向かう。


「会長を返しやがれ、このっ・・・雑魚が!!」
「・・・道を開けてもらうぜ・・・!」


通った先に見えた、郷田会長の乗った車椅子。
その車椅子を押して歩く男を蹴っ飛ばした私は、すぐに郷田会長の無事を確認した。


「郷田会長・・・!ご無事ですか?」
「あぁ・・・。ほんまに、すまんことを・・・」


ざっと身体を確認したが、特に怪我は見当たらない。
クーデターとはいえ、さすがに会長自身へ危害を加えることはしなかったようだ。

一応、郷田龍司のお父さんらしいしな。
無事を確認して一安心した私は、会長の車椅子を桐生の方へ近づけた。
郷田会長は申し訳なさそうに頭を下げ、桐生に対して詫びの言葉を口にする。


「あんたに助けてもらうとは、本当に・・・お詫びのしようもありまへん」
「・・・東城も近江も関係ありません。お気になさらず」


それは本当のことだった。
盃を交わす以上、東城の問題も近江の問題も関係ない。

お互いに、五分の関係になるのだ。
とりあえず今は、会長を安全な場所へ移さなければ・・・。


「大吾・・・!?」


車椅子を持って移動しようとしたその瞬間、見覚えのある男ががっくりとその場に倒れた。
大吾だ。龍司と戦っていた大吾が、腹を押さえながら咳き込む。

特に大きな傷は無いようだが、相手が龍司だっただけに心配だ。
慌てて桐生が掛け寄り、倒れた大吾を抱え起こす。


「しっかりしろ・・・!」
「やっぱり、あの男・・・只者じゃねぇ・・・」


どうやら大吾は危険を感じ、逃げてきたらしい。
すぐに大吾の後ろから噂をしていた男、龍司が現れ、怒りの表情を大吾に向けた。


「まだ勝負はついてへんやろが・・・!!!」


このままじゃ、殺される。

一瞬そう思うほどの殺気を感じた。
こいつ、やっぱり本気でやばい。

咄嗟に大吾を庇うように立ち、桐生の判断を無言で待つ。


「・・・・大吾、お前は郷田会長を連れて東城会へ行け」
「そいつとのケリは、俺が・・・!」
「今は郷田会長が、東城会と盃を交わす方が先決だ。それにお前を・・・ここで死なすわけにはいかない」


それを聞いていた私は、意外にも桐生が私に帰れと言わなかったことに驚いていた。
いつもの桐生なら、大吾と一緒に帰れっていうのに。

不思議そうに桐生を見ていると、そのことに気づいた桐生が小声で囁いた。
私の肩に手を置き、にやりと自信あり気な表情を見せる。


「お前は俺と残れ。どうせお前のことだ・・・大人しくは帰らねぇだろ」


理解してくれたのは嬉しいが、どこか馬鹿にされているような気がしてむかついた。
ま、別に良いんだけどよ。その通りだし。

大吾は不満そうにしながらも、桐生の言うことを聞いて郷田会長を連れて逃げ始めた。
その行く手を阻もうとする組員達を、私が片っ端から処理していく。

盃が目の前に迫ってるんだ。邪魔はさせねぇ。


「やっと二人きりになれたのう・・・」
「・・・会長は、東城会が預かる」
「アンタを倒して、奪い返せばいいだけの話や」
「・・・やってみるか?」
「あぁ・・・」


どうやら桐生の方も桐生の方で、龍司との戦いになりそうだ。
じゃあ私は、このままコイツらの相手でもしてようかな。

大吾の邪魔、させるわけにはいかない。

もちろん、桐生の邪魔も。


「おい、アマ!そこを退かんかい!」
「嫌だね。お前等のリーダーは桐生とサシで戦ってるんだ・・・そして大吾も、盃のために東城会へ帰るんだ。何一つ、お前等が出る場所はねぇよ」
「ンだとこら・・・!ええで、それなら無理やり退かしたるわ!!」


殴りかかってきた男の手を取り、腹部に膝蹴りを撃ちこむ。
そしてそのまま二人目の男に男を投げ捨て、トドメとばかりにその上に飛び乗った。


「おりゃ!」
「「ぐえええっ!?」」


さぁ、次だ次。
まだまだ私は行けるぜ?と挑発すれば、すぐに男達は牙を剥いた。

安い挑発に乗ったばかりか、目の前が見えていないような雑な攻撃を仕掛けてくる男達。
所詮雑魚は雑魚ってことなんだろうか。
作業をこなすように勝負をしながら、後ろで戦っている桐生達の様子を横目で確認する。


「(龍司も大吾との戦いで弱ってるみてぇだな・・・あれなら、いけるか?)」
「よそ見してるんやないで、この・・・!」
「あーあー、うるせぇよ・・・っ!!!」


よそ見したって、私はお前たちなんかには負けはしねぇよ。
それを証明するかのように勢いよく足を上げ、近づいてきた男の顔面に足を掛けた。

顔面に体重を掛け、地面と変わらない要領で空中に飛ぶ。
嫌な音と共に首を押さえながら倒れる男を見て、私はそのまま飛んだ勢いでもう一人の男を踏みつぶした。

人と人の間を飛ぶ。舞うように蹴って、相手を惑わせる。

この力は桐生のためにあるんだ。だから絶対に負けたりしない。


「そぉら!!」
「ちょこまか逃げんな、このやろう!!」
「ったく、女相手一人にがっつくなよな・・・おわっ!?」


じりじり下がりながら複数人を相手にしていると、小さな段差につまずいて視界がガクンっと下がった。
急いで体勢を立て直そうとするが、相手も一応は極道者の男。

この隙を、見逃すやつなんて居るわけも無く。

すぐに倒れた私を囲み、一人が私の上に圧し掛かってきた。
さすがに男の体重を弾けるほど、私の力は強くない。


「おいおい、さっきまでの威勢はどうしたんや?嬢ちゃんよぉ」
「ぐっ・・・!重いんだよ、退きやがれ・・・!!」
「退くわけねぇだろ?さ、どうするんや?」


圧し掛かってる男は、力強い力で私の身体を地面に押し付けた。
勝負が続いて疲れていただけに、苛立ちと疲労で抵抗する気も失せていく。

だからといって、別に諦めたわけじゃない。

こっそりと右手をポケットの中に忍ばせ、反撃の機会を窺う。


「なんや、急に大人しくなりよって・・・」
「諦めたんとちゃうか?やっちまえや!」
「じゃあ、お楽しみといこか?お嬢ちゃん?」


楽しそうだな、このクズ。
ニヤニヤと男の欲望をむき出しにして笑う姿が、とても不愉快でしょうがなかった。

私の顎に手を滑らせた瞬間を狙い、ポケットに突っ込んでいた手を男の目の前に突き出す。
そして取り出したスプレータイプの瓶を構え、思いっきり中身を噴射させる。
プシュッと音を立てて一瞬だけ出た霧状の薬に、男は一瞬だけ怯んだのち、大声を出して笑い始めた。


「ぶっ・・・あっはははは!!なんだい?それは!!」
「玩具じゃ、ワシらは倒せまへんで?」
「・・・・」


笑ってられるのも、今のうちだ。
薬を作った本人である私は、薬をなるべく吸わないよう口を塞ぐ。

男の笑い声。いやらしく辿る手。
それらが急に止まるまで、そう時間は掛からなかった。

急に静かになった男を見て、後ろに居た男達が首を傾げる。


「・・・」
「お、おい?どうしたんや、お前・・・・」


私に乗っていた男は、その質問に答えることなく意識を飛ばした。
異変に気付いた男達が、慌てて私から薬を奪おうとするがもう遅い。

この瓶の正体は“痺れ薬”
少しでも呼吸器官に入れば、感覚を麻痺させられ、自然と意識が消える仕組みになっている強力なものだ。
もちろん、ある程度抗体を持っている私には、そこまで効くものじゃないが。


「この、アマ・・・っ!!」
「はいはい。おやすみ」
「ぐあっ!?」


襲ってくる男達に薬を撒き、蹴り倒すだけの作業。
しばらくそれを続けると、もう立っている男達は居なくなってしまった。

確認できるのは、遠くで戦っている龍司と桐生だけ。
応援しに行こうと走り出した瞬間、桐生の拳が龍司を思いっきり捕えた。


「ぐあっ・・・!?」


さすがに、あの男達の戦いには入りたくないと心から思う。

だって私の勝てる相手じゃねぇよ、あんな奴ら。
化け物同士の戦いだ。もはや人間の領域じゃねぇ。


「桐生!」
「・・・あけ。無事だったのか」
「あったりまえじゃん。ほら、終わらしたぜ?」


私の後ろに広がる、酷い状態の男達。
そのほとんどが悶え苦しんでいるのに気づき、桐生はやれやれと眉を顰めた。

桐生はあんまり、私が薬を使って戦うことを好んでいない。
なぜなら、抗体があるといえど、僅かでも自分自身に影響することは確かだからだ。
失敗すれば自分の死にも繋がる戦い方を、許せないのだろう。

でも今回はしょうがなかったんだ。
両手を顔の前で合わせ、謝るポーズを取る。


「わりぃ。油断してたら圧し掛かられちゃったんだよ。ま、無事に倒せたから良いだろ?」
「ったく、てめぇは・・・」
「まだや・・・まだ、勝負は終わっとらん・・・!」


座り込んでいた龍司が放つ、殺気に似た低い声。
それを見た桐生は握っていた拳を解き、龍司を睨み付けた。


「・・・・俺は、対等じゃねぇ勝負は嫌いなんだ」
「何やと?」


決して煽りで言ったわけじゃないと、すぐに理解することが出来た。

龍司は大吾とやり合っている。
そんなの、対等じゃないのは当たり前だ。

・・・いやまぁ、それを言ったら、桐生も対等じゃねぇんだけどな。


「お前は大吾とやり合った・・・アイツは強い。まともな状態じゃねぇはずだ」
「へっ・・・どっちかが死ぬまで、勝負はおわらへんで・・・!!」


龍司の絞り出すような声が響いた瞬間だった。
遠出から、最も聞きたくない音が聞こえてきて、ヒクッと顔を引き攣らせる。

この音に、聞き覚えがないはずがない。
お世話になりたくない、警察のパトカーの音だ。
徐々に近づいてくるその音に龍司も気づいたのか、クソッ!と吐き捨てて本部の中に逃げ込んで行った。

もちろん、「いつか殺したる」という殺人予告を投げ捨てて。


「あー・・・どうするよ、桐生」
「・・・どうするもこうするもねぇだろう」
「だよなー。こうなったらもう、逃げ場ねぇよな」


パトカーが本部の敷地内に乗り込んでくる。
何台も、何十台も。

逃げられないことを悟った私は、大人しくその場に立ち尽くした。


「本部内の全員、連行や」


その命令を聞き、囲んでいたパトカーから警官が飛び出す。
そしてその命令を下したのは、私と似たような風貌の女だった。

女なのに、こんなヤクザの取り締まりをしてるのか?
一瞬そんな疑問を抱いたが、私も人のことを言えないのだと、心の中で笑った。
そうしている間にも、女がゆっくりと私たちの方に近づいてくる。


「桐生一馬さん、風間あけさんですね?」


名前までバレてるし。
ここは抵抗せず、大人しく捕まるのが吉だろう。


「・・・そうだけど」
「あぁ、そうだ」


大人しく身元を認めた私たちに、女が警察手帳を取り出した。
書かれている名前は、狭山薫。

府警四課所属の警察だ。
通称ヤクザ狩りの女。まさかこんなところで会うとは。

事前に行った情報収集で聞いたことがあった名前なだけに、更に焦りが広がっていく。


「府警四課の狭山薫です。貴方達を、傷害の現行犯で逮捕します」


やばい。
このまま捕まって、逃げられるか分からない。

ヤクザ狩り、なんて呼ばれるほどだ。
情報を聞いたときは会いたくないって思ってたのに、と。運命を恨んでも恨みきれない。

だけどここで抵抗するわけにもいかないのは確かなこと。
私は大人しく手錠を掛けられた桐生を見て、何も言わずに従うことにした。

掛けられる手錠。

冷たい感覚に、少し心臓が跳ねる。


「(こんなところで、捕まって終わりなんて勘弁だぜ・・・)」


桐生と私は、何故か個別の車に乗せられた。
運転手は狭山。桐生が助手席に乗せられ、私が後ろの座席に座る。

これは正直ラッキーだった。
後ろならある程度死角をつけるし、脱走の準備も出来るかもしれない。

とにかく今は無言で耐えるのみ。


「(・・・?)」


しばらく無言で外を見ていると、急に景色が変わったことに気が付いた。
桐生もそのことに気付いたのか、ミラー越しに私の方を見てくる。

この車・・・なんで警察署の方に行かない?
他のパトカーの集団は全員今の角で曲がったのに、この車だけが直進を続けている。

ここを真っ直ぐ進むと、蒼天掘りの近くだが―――一体どこへ連れて行くつもりだ?

何を考えてるんだ、この女。


「(チッ・・・どうすればいい・・・。どちらにしろ、やばい状況に変わりは・・・・!!)」


掛けられた手錠。
無言で運転を続ける、ヤクザ狩りの女。

焦りだけが私の心を占める中、車は人通りの少ない道をひたすら進み続けた。





















これが、波乱へと巻き込む第一歩。
(私と桐生はずっと、車の中で静かに顔を見合わせ続けた)
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