いらっしゃいませ!
名前変更所
私は遥と、のんびり神室町を歩いていた。
どうせ話し合いには時間が掛かるだろうし、タクシーを使えば駅までそう遠くない。
もしかしたら、いや、もしかしなくても。
桐生はあの書状の話を関西に通しに行くだろう。
そうなれば、危険が付き纏う旅が始まる。
神室町に戻って来れるのも、いつになるか分からない。
だから私は今、こうやって遥と歩く時間を大事にしたかった。
「(思い出すなぁ・・・)」
1年前の、遥と歩いたときのことを思い出す。
遥に色々からかわれたんだっけ。あの店って何?とか聞かれてさ。
小さい子供に、あのお店何?ってキャバクラを指差される恐怖。
あの時は本当、ビックリした。
「ふ・・・」
「お姉ちゃん?どうしたの?」
「いや、遥にキャバクラの事聞かれたときを思い出してな」
「えへへ・・・お姉ちゃん、すっごく慌ててたよね!」
「う、うるせぇな・・・」
恥ずかしくなって顔を逸らせば、後ろから遥の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
遥が楽しそうにしてるのは嬉しいが、こっちとしては何か悔しい。
それにしても、神室町は変わんねぇよな。
最近は前よりも騒ぎしくなったって聞いたけど、元々騒がしかったし。
まぁ、私は桐生と違って、神室町で仕事を続けていたのもあるのだが。
「・・・・ごめんな、遥」
「え?」
「また、寂しい思いをさせるだろ?」
遥だってまだまだ子供だ。
そんな遥を守りたい、平和に過ごさせてあげたい。
そう思ってたのに、また遥を一人にしてしまう。
申し訳なくなって謝ると、遥は少し怒ったように私の手を摘まんだ。
「いだっ!?」
「お姉ちゃんは心配しすぎだよ!私、嬉しいんだから」
「え・・・?」
「確かに寂しいけど・・・でも、おじさんが仕事してるところ、嫌いじゃないから」
「遥・・・」
「それに、お姉ちゃんが一緒に行ってくれるから、安心だもん!」
ほんと、私が遥に救われてどうすんだよ。
遥の言葉に元気づけられた私は、遥の頭を優しく撫でた。
「ありがとな、遥」
「ううん」
「それじゃ、残りもふらふらしながら歩くか!」
「うん!」
昼も夜も関係無く、煌びやかに光る町。
女と子供が2人で歩くような場所じゃないが、私達にとっては庭のようなもんだ。
キャバクラに、ゲーセンに、カジノに。
見覚えのある景色を、遥と二人で話しながら歩く。
「あそこのゲーセン、新しい景品のちぃねこってあったよな」
「うん!あれすっごく可愛いんだよ!」
「そうなのか?んじゃあ、帰ってきたら一緒に取りに行こうぜ!」
「ほんと?やったぁ!欲しかったんだ~!」
うん、やっぱ遥は可愛いな。
意味もなく遥の頭をわしゃわしゃと撫でると、遥から抗議の声が上がった。
こんな癒しの時間も、そう長くは続かない。
なんたってここは“神室町”だ。
ひまわりへの道を曲がろうとした私を、見覚えのない男が邪魔しに入る。
「ん?なんか用か?」
ニタニタと笑う男が、4~5人。
気づけば私たちを取り囲み、楽しそうに笑っている。
あー、厄介な奴らに絡まれたみてぇだ。
遥を庇うように抱きしめ、取り囲む男たちを睨み付けた。
ここで大人しく逃げてくれれば、何事もなく終わってくれるんだが。
「お嬢ちゃん達、今からどこいくのかなぁ~?」
「・・・お兄ちゃん達には関係ないでしょ」
「そうだな。私達の勝手だ」
「そんなこと言わないで、俺たちと良いことしようぜ?な?」
「うっせぇ。さっさと退け。今急いでるんだ」
「いいねぇ~!俺たち、強気な女もばっちり好み!」
こいつら、話聞いてないだろ。
勝手に話を進めるチンピラ達に苛立ちつつ、出来るだけ喧嘩にならないよう私は自分を抑えこんだ。
遥の前では、あんまり喧嘩したくない。
だからといって、こいつらが静かに引くとも思えない。
「・・・あのなぁ、私は急いで・・・」
「お姉ちゃん」
「ん?」
“やっつけちゃって”
「へ・・・?」
「ね、お姉ちゃん!」
い、今、なんて言った?
やっつけちゃって?絶対そう言ったよな?
てっきり遥が怖がっていると思っていた私は、怖がる様子も見せずにノリノリな遥を見て、驚きを隠せなかった。
確かに博打の時も堂々としてたけど、まさかここまでとは。
思わずぽかーんと立ち尽くしてしまった私を、男の一人が揺さぶって起こす。
「おい、姉ちゃん!おーい!聞いてんのか?」
「・・・・っ!あ、あぁ。聞いてるよ」
「ほら、じゃあ俺たちと一緒にイイコトし・・・」
「そぉらッ!」
「ごふ!?」
話を遮り、男の顎に膝蹴りをかました。
歯と歯がぶつかり合う嫌な音が響き、私は思わず耳を塞ぐ。
こうなったらもう、やってやるしかない。
喧嘩は引いたら負け。相手が何だろうと私には関係ないことだ。
「くそ、このアマァ・・・!」
「はー・・・急いでる時に限って・・・」
「がぁっ!?」
「ったく・・・弱いんだよ」
ただただ真っ直ぐ殴りかかってくるだけの奴ら。
強く見えるのは“威勢”と“数”だけだろう。
そんな奴らに、私がやられるワケがない。
遥が応援する中、私はあっという間に男たちを地面にひれ伏せさせた。
悶絶する男たちを無視して、待っていた遥の手を掴む。
「さ、遥。ひまわりが見えてきたぜ」
「うん!・・・気を付けてね、お姉ちゃん」
「大丈夫だ。メールもするから、心配すんな」
ったく、時間が無い時に限って絡んで来やがって。
私は遥をひまわりの近くまで送ると、イライラしながら携帯を開いた。
時間は夕方過ぎ。
やばい。向こうに行く前の準備もしたいのに。
手を振る遥に笑顔を返し、急いで自分のアジトへと向かう。
「っと・・・・」
そういえば、アジトに帰るのは久しぶりだな。
これまでずっと桐生の家に居たし、神室町に出てきても情報屋の仕事だけだった。
セレナがあるお店の、ちょうど裏の道。
壁をすーっとなぞれば鍵穴が出てきて、私の事を招き入れる。
久しぶりのアジトの匂い。誰もいない、薬の匂いだけが香る空間。
「・・・なんか、ただいまって感じがするな」
桐生の所に帰ると、必ず遥が出迎えてくれた。
それが無いこの場所も、一応私が一人で頑張ってきた場所。
懐かしい、私の家。
って今はそれどころじゃないんだった。さっさと準備しないと。
「これと・・・んー、これも持っていくか・・・」
荷物にならないよう、最低限のものだけを鞄に詰める。
自分の防衛手段になる薬、逆に身を助けるための薬。
ある程度のお金と、情報整理用の携帯。
向こうに行くからには、向こうの情報もきちんと集めなくちゃいけない。
さらっと盃が交わせるって保障もねぇ。
「よっし・・・こんなもんか」
私の情報収集スタイルである、変装グッズもばっちり入れた。
さぁ、それじゃあ・・・・行くとするか。
生まれて初めての、関西へ。
出来れば旅行で行きたかったんだけどな
(桐生と、遥と、三人で)
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