Erdbeere ~苺~ 1章(2) どこまでも共に 忍者ブログ
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2012年06月06日 (Wed)
1章(2)/ヒロイン視点

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敵の全てが地面にひれ伏すまで、そう時間は掛からなかった。
さすがは堂島の龍。堅気になってもこれだけ動けるとは。

私はホッとして桐生の方を振り返り、優しく微笑んだ。
その笑みは返されることなく、桐生の鋭い瞳に吸い込まれる。


あけ、退けッ!」
「ッ・・・・!」


桐生の声と同時に、私はもうその場から突き飛ばされていた。
地面に背中を強く打ち付け、一瞬だけ息が止まる。

そしてその瞬間、また私の目の前で血が飛び散った。


――――パァン。


生温い血が、私の頬を濡らす。

桐生が撃たれたのか?いや、違う。
撃たれたのは寺田だ。
しかも、やられたのは左胸。


「寺田ッ!」
「寺田さん・・・!」


私はすぐに救急車を呼び、寺田が撃たれた場所を手で押さえた。

でも駄目だ。出血が酷過ぎる。
こんなんじゃ全然止まりそうにない。

クソ、どうしてこんな事になるんだ。

今の今まで、平和な日常を頼むってお願いしたばっかりだってのに。
苛立ち紛れに舌打ちをすれば、寺田が震える手で私の手を掴む。


「・・・・?寺田?どうした?」
あけさん・・・桐生さん、これ、を・・・」


そう言って手渡されたのは、寺田の血で染まった書状。
きっと、盃の事に関することが書かれているのだろう。

寺田、死ぬなんて許さねぇぞ。
おじいちゃんを助けてくれたお前が、死ぬなんてそんな。


「寺田・・・どうしてお前・・・!」
「良い、んです・・・。桐生さんと私とでは格が違う・・・」
「・・・っ」
「東城会の明日を想えば・・・これ、で・・・」


息も絶え絶えに苦しむ寺田を、私は必死に支え続けた。
遠くの方から、救急車の音が聞こえてくる。

誰が呼んだんだ?もしかして、遥?

遥の方を振り向けば、遥がぎゅっと携帯を握りしめていた。
さすがというか何というか。遥の冷静さには頭が上がらない。


「寺田、しっかりしろよ・・・!」


到着した救急車に寺田を乗せ、名前を呼び続ける。
寺田はおじいちゃんの意思を継ぐ、若くして貫禄のある強い男だ。

こんな所で、東城会の貴重な人材を失うわけにはいかない。
無機質に響く心電図の音が、寺田の死が近いことを知らせる。


「寺田・・・っ!」
「寺田さん!」
「寺田!」


私たちの呼びかけに、寺田はぴくりとも反応を見せなかった。
その代わりに反応したのは、響いていた心電図の音。


一定だった音は急に早さを増し―――

――――やがてピーという耳障りな音に変わる。


この音が何を意味しているのか、分からないわけじゃない。
また失ったんだ。おじいちゃんの意思を継ぐ者を、また。


「私」


耳障りな音を掻き消す、遥の透き通った声。
私はゆっくりと遥の方を向き、どうした?と首を傾げる。


「・・・私、しばらくひまわりに行ってる」
「遥・・・」
「おじさんもお姉ちゃんも、大事なお仕事があるんでしょ?」


遥の気遣いに感謝しつつ、私は遥を思いっきり抱きしめた。

いつもいつも、迷惑ばっか掛けてごめんな・・・遥。
怖い思いをさせて、寂しい思いをさせて、やっと平和になったのに。

桐生の事だ。
この書状を受け、寺田の代わりに盃の話をしに行くつもりだろう。
そんな桐生を、一人で行かせることなんて出来ない。


「ごめんな・・・遥。すぐ終わらせてくるから、待っててくれ」
「うん。気を付けてね?」
あけ・・・お前は遥と一緒に・・・」
「何度も言わせるなよ、桐生。一人だけでっていうのは許さねぇって言っただろ?」
「・・・頑固だな」


救急車が病院に着いたら、たぶん桐生は東城会の本部に行くはずだ。
弥生姐さんの事を思い出した私は、咄嗟に手帳を1枚破る。

せっかくだし、挨拶の手紙ぐらい書いとかねぇと。


「じゃあ、私は一回、遥をひまわりまで送ってくるな」
「あぁ。俺は東城会本部に行って、これを見せてくる」
「・・・終わったら電話してくれ。新幹線のチケット取って駅で待っとくから」
「分かった」


東城会に行くよりも、遥を送ることを優先する。
今から寂しい思いをさせっちまうんだ。

せめてひまわりまでは、楽しくお喋りしてやりたい。
私はさっき書いておいた紙を折ると、桐生に投げ渡す。


「ん?・・・なんだこれは」
「弥生姐さんに渡してくれ。私からの手紙だ」
「何書いたの?お姉ちゃん」
「・・・読んでみるか」
「わ、や、やめろっ!」


手紙を見ようとする桐生を、私は慌てて止めた。
不機嫌そうに桐生が睨み付けてくるが、見せられないものは見せられない。

当たり前だろ?だって、姐さん宛に書いた手紙だ。
桐生のことをよろしくだとか色々書いたんだから、見られるのはちょっと困る。


「そんなに慌てられると、逆に気になるな」
「い、いいから!見るなよ!?私はもう行くからなっ!」
「ばいばい、おじさん。必ず迎えに来てね!」
「・・・あぁ」


私は桐生のことを睨み付けながら、遥の手を取って歩き出した。
どうか、どうか手紙の中身を見ませんように。

・・・・くそー。こんなことなら、あんな事書くんじゃなかった。


















【弥生姐さんへ


お久しぶりです、姐さん。情報屋の鷹のあけです。
今回のこと、私は桐生と一緒に見届けるつもりです。

寺田の書状に対し、反対するものも少なからず居るでしょう。

それでも私は、桐生が選んだ道を支えるつもりです。
アイツは私が守ります。桐生が選んだ道にどれだけ敵が居ても。
桐生を最後まで守り抜き、無事にまた神室町まで戻ってきます。

ですからどうか、ご協力をお願いします。


            風間あけ

























どこまでも、私はアイツを守るんだ
(遥と手を繋ぎながら、しばらくは戻れないであろう神室町を歩いた)
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