Erdbeere ~苺~ 9章(2) 友情か警察か 忍者ブログ
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2011年12月31日 (Sat)
9章(2)/ヒロイン視点

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ラウとの戦いは、思ったよりも長引かなかった。
私達が二人掛かりだったからなのか、強くなったからなのかは分からない。
倒れるラウを尻目に、私は遥の元へと駆け寄る。

遥は怯えるというよりも、申し訳なさそうに桐生へと抱き着いた。
何度も何度も「ごめんね」と謝り、桐生はそれを優しく宥める。


「遥・・・お前が無事でよかった」
「おじさん・・・」
「ほんとほんと。無事でよかったぜ、遥」
「お姉ちゃん・・・」


遥の頭を優しく撫でていると、急に騒々しく扉が開かれた。
そこに居たのは、伊達さんではなく警察の人々。

私達は警察に銃を向けられ、手を上げるしかなかった。
突き付けられた容疑は“誘拐犯”

そういえば伊達さんに車の中で聞いたような気がする・・・・警察も遥の捜索をし始めているって。


でも何故、警察が遥の捜索を?
元々遥を探していたのは由美さんのはずだ。

それは私が由美さんに会って、確かめてるから間違いないはず。
だとしたら警察は何と関わって遥を捜してたんだ?警察にまで裏の組織が?

考える暇をまったく与えてくれない警察は、何故か桐生だけを連行し始める。


「お、おい!私はいいのかよ」
「何を言ってるんだ?お前も被害者だろう。お前たちはこっちだ」
「・・・お姉ちゃん・・・」
「大丈夫だ、遥」


連れて行かれる桐生の後ろを、私達は静かについて行った。
警察に連れて行かれた先は、もちろん警察署の中。
今までラウと戦っていたのが嘘のように、静かな部屋へと案内される。

取調室のような場所に入れられた私達は、とりあえずここに居てくれと言われて扉を閉められた。
その直後、外から聞こえてくる“ガチャリ”という施錠音。


「・・・・はぁ」
「お姉ちゃん・・・おじさん、どうなっちゃうの・・・?」
「大丈夫だって。私が何とかする」


確かにあの状態だと、桐生が誘拐犯だと思われてもしょうがない。
桐生はまだ仮釈放中だし、出てくるのは難しいだろう。

でもそれで、警察が正しいとも思えなかった。
これはこれで何かが動いている。絶対に。
それを証拠にこの部屋も、外から施錠するという厳重さだ。


「(警察の裏で、何かが絡んでるとしか思えねぇよな・・・)」


普通なら被害者を、軽く監禁状態にするなんてありえないのが一つ。
そしてもう一つが警察の動き。

由美さんは表ざたに出来ないから花屋の所や私の所に来たんだ・・・・それを今更、警察に頼んで捜索させるわけがない。

やっぱり、警察に絡んでる誰かがいる?錦山なのか?
それが分からない以上、ここに居続けるのは危険だ。
私はすぐに施錠された扉を揺らし、周りに人が居ないか確かめる。


「お姉ちゃん?」
「しっ・・・静かに」


扉をがちゃがちゃさせても、扉の外は静かなままだった。
どうやら今、近くに人はいないらしい。
私は遥の手を握り、一瞬迷ったが連れて行くことにした。

閉まっている扉を蹴り開けるのは、目立ってバレてしまうだろう。
自分のポケットを必死に漁り、冷たい感触を感じた私はニヤリと笑った。


「良い物みーっけ」
「っ!」
「大丈夫。ニセモンだから」


すっかり忘れてた銃を取り出し、それをじっくりと見つめる。

これは昔、情報の報酬として貰ったものだ。
本来ならお金でしか受け取らないのだが、凄腕の武器屋だと聞いたのでこれを作ってもらうことにした。

私専用の、ゴム弾銃。
取り出した銃をくるりと回した私は、遥に見えるようにして銃の頭を外す。


「ここに、大きな穴があるだろ?」
「うん」
「ここにこれを、こうやって・・・」


“私専用”の銃にある、私専用の仕掛け。
それは穴に瓶を刺すことで、薬を水鉄砲のように発射できるというもの。

私は薬をセットした銃の引き金を引き、鍵穴に薬を流し込んだ。
どろどろとした液体が、鍵穴を不気味な色で染めていく。


「見てな」
「わぁ・・・!」


薬が固まったら最後。
一瞬で偽鍵の出来上がりだ。


「魔法みたい!お姉ちゃん凄い・・・!」
「・・・ありがとな。じゃあ、行こうか」
「うん!」


簡単に開いた扉を見て、遥が嬉しそうに笑う。
それにつられ、私も小さく笑みを浮かべた。

まず向かうべき場所へと、様子を窺いながら進む。
桐生はたぶん、独房の中に閉じ込められているはずだ。
気配の無い廊下を遥と進みながら、独房の鍵を探し求める。


「(さっきの薬、もっとたくさん用意しておくんだった・・・使うなんて思ってなかったから、桐生の分が足りねぇ・・・)」
「ねぇ、お姉ちゃん!あの部屋は?」


普通の部屋とは違い、資料室のような部屋を遥は指差した。

確かに、ああいう場所なら鍵が保管してある可能性も十分高い。
私は遥の頭を軽く撫で、すぐに部屋の中へと忍び込んだ。

様々な資料で部屋が圧迫されているのか、ものすごく狭く感じる。
急いで鍵を探し始めた瞬間、後ろに気配を感じて足を止めた。


「ちっ・・・!」


咄嗟に振り返り、偽の銃を突きつける。
後ろに迫ってきていた男はそれに怯える様子を見せることなく、私の顔を見て名前を呼んだ。

声にも、顔にも見覚えがある。
でもここには居ないはず。
いや、居てはいけない存在。


「なんで伊達さんがここに・・・」
「鍵を探しにだ」
「だから何で探しに来たんだって聞いてるんだ」


伊達さんは警察だ。
鍵の場所も知ってるだろうし、このまま聞いた方が都合が良いだろう。

だが、私には分かっていた。
伊達さんが罪を犯し、桐生を助ける道を選んだことを。
表情を見ただけで分かる。どこか吹っ切れた顔をしていたから。


「伊達さん・・・お前、それでいいのかよ?」
「遅かれ早かれ、クビだったんだ」
「だからって自分で早めることないだろ?好きな、職業なんだろ?」


初めて伊達さんと会った時、私は伊達さんを真っ直ぐな刑事だと思った。
真っ直ぐな刑事は今の時代では邪魔なだけ。
捻くれたことばっかり言っているが、心は真っ直ぐ事件の真実だけを追い求める。


桐生によって人生を狂わされた。
これは伊達さんとはじめてあった時、桐生に対して口にしていた言葉だ。

確かにそうかもしれない。
桐生は罪をかぶり、背負い続けたんだ。
真実が知りたかった伊達さんにとって、アイツは予想外の存在。


「伊達さん・・・わりぃな」


扉の外に別な気配を感じた私は、容赦なく伊達さんの腹を蹴り上げた。
「ぐあっ」と苦しげな悲鳴が上がるのを、聞きながら私は大声を上げる。

わざと、外に聞こえるように。


「おい。鍵はどこだ?」
「けほっ・・・お、お前・・・」
「鍵はどこだっつってんだよ!答えねェなら・・・」


カチリ、と。
音を立てて偽の拳銃を突きつける。
伊達さんはどうして私がこのような行動を取ったのか、扉の外に映る影を見て気づいたらしい。

伊達さんが小声でそっと謝るのを聞いて、私は無言で首を振った。
そしてすぐに銃を構え、“演技”の続きを始める。


「伊達さん、せめてこの事件が終わるまでは警察でいてくれ。私は伊達さんが警察として働いてる姿・・・好きだからさ」
あけ、おまえ・・・」
「おい!さっさと鍵の場所を教えろ!てめぇの頭、撃ち抜いたっていいんだぜ!」
「・・・こ、こっちだ」


指示す先にあった鍵を見つけ、私は別な場所を探していた遥を呼び戻した。
伊達さんに拳銃を突きつけたまま、扉の外へと移動する。
案の定、扉を開けると、そこには影の主であろう一人の警察が立っていた。

でもまぁ見る限り、あまり上の立場の人間では無いだろう。
銃を突き付けている私を見て、その男はオドオドしているだけで何もしてこようとはしない。


「お、お前、そいつを放せ!こんなことをして良いと思ってるのか!?」
「なんだそのへっぴり腰は。そんなんじゃ私は脅せねぇよ。じゃあな」
「まっ・・・まて!」


追掛けて来ようとする警察に対し、持っていた睡眠スプレーを吹き掛けた。
警察は一瞬で眠りに落ち、死んだように眠り始める。

それを見た伊達さんが、少し慌てたように私の肩を叩いた。
寝てるだけだと伝えれば、安心したように深い息を吐く。


「んじゃ、桐生を助けに行こうか」
「・・・あぁ」


慣れない警察署の中を進み、桐生の待つ独房へと向かった。
普通は、慣れたら行けないんだけどな。
しばらく無言で進んだ後、独房の中に無表情で座る桐生を見つけて声を上げる。


「桐生!」
「!?あけ・・・何でお前が」
「良いから。伊達さん、車出せる?」
「あぁ。任せとけ」


伊達さんと遥を先に行かせ、私は鉄格子の鍵を開けた。
ゆっくり出てくる桐生の手を握り、急いで伊達さんがいるであろう外を目指す。
早くいかないと、私よりも伊達さんが危ない。

まぁ、あのままだと私が悪い人になってしまうわけだが。
実際悪い事やってるわけだし、あまり気にしていなかった。

伊達さんに、謝られるまでは。


「・・・本当に悪いな、あけ


隣を見れば、運転しながら暗い顔を浮かべる伊達さん。
気にしないでって言ったのに。まったく。
飽きれながらも、伊達さんの真面目っぷりにヤレヤレと首を振る。

真面目なんだか問題児なんだか、分からない。
私はポケットの中身を確認しながら、伊達さんに言葉を返した。


「言っただろ。私がやりたくてやったことだって」
あけ・・・」
あけ・・・伊達さん・・・すまない」
「あーもう、桐生。お前も謝るなって。仲間助けるのは当たり前だろーが」


後ろに座る桐生に持っていたキャンディを投げつけ、べーっと舌を出す。
桐生はそのキャンディを無愛想な顔で受け取り、袋から飴を取り出して遥に渡した。

車の中に広がる、甘いイチゴの香り。
そしてそれと同時に聞こえた、急速に近づいてくる車の音。
不審に思って窓から身を乗り出して振り返った私は、近づいてくる車の集団に慌てて窓を閉める。


「おおお、おい、伊達さん。やべぇぞ!」
「チッ・・・つけられてたか」
「どうする、伊達さん」
「桐生、あけ、これを使え」


伊達さんから投げ渡された、本物の銃。
桐生は普通に銃を構えて追手と対峙しようとしていたが、私はそうもいかなかった。

何故なら、銃が怖かったから。
偽物は偽物だから扱えるのだ。それなのに、本物なんて。
震える私に気付いたのか、桐生がそっと私の耳元に唇を近づける。


「安心しろ。いざとなったら俺が全部やってやる」


それは安心させる言葉であると同時に、私に対する“煽り”でもあった。
守られるのが嫌いな、私への。


「誰がお前なんかにやらせるかよ。お前はそっちを頼んだぜ」
「震えてるくせに、強がってんじゃねぇ」
「う・・・うるせぇ!」
































下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる
あけのド下手な射撃を見ながら、伊達は真っ直ぐ先を目指した)
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