Erdbeere ~苺~ 7章(3) 遥の才能 忍者ブログ
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2011年12月05日 (Mon)
第7章3部/ヒロイン視点

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花屋の所で休む前に、私達は遥と街で遊ぶことにした。
人間、休息が大事ってわけで。
今までずっと恐怖と緊張の中にいた遥を、少しでも休ませてあげようというものだった。

頭の傷は、桐生に責任もってしっかり治療してもらった。
まだ少し痛むが、さっきよりは酷くない。


「あそびかぁ・・・でも、あんまりねぇよなー」
「まぁ、神室町だからな・・・」
「私、どんなところでも大丈夫だよ!」


どんなところでもって、言われても。
子供の遥を連れて遊べる場所は、結構限られている。

楽しんでもらえれば良いけど、連れていくのに問題があるお店も多い。


神室町で楽しめる場所ってあったっけな?
しかも子供と一緒でも大丈夫な場所・・・。

歩きながら悩んでいた私の頭に、ふととある場所が浮かぶ。
子供と一緒で良いのかは微妙だが、普通の場所よりは楽しめるだろうと桐生に提案することにした。


「中道通りと秦平通りのぶつかる場所に、宝くじ売り場があるんだ」
「宝くじじゃ、楽しくねぇなぁ」
「おいおい。私が普通の宝くじやろうなんて言うと思うか?」


手持ちの財布を探り、さっと10万円を取り出す。
私がこれから行こうとしてるのは、賭場だ。
あれも大人の遊び場だが、丁半賭博なら遥でも楽しめるだろう。

出るコマを予想して、丁か半かを言うだけの遊び。
つまんないって言われたら御終いだけど、私は結構好きだ。


「そんなところが、宝くじ売り場に・・・?」
「あぁ。どうだ遥。行ってみるか?」
「うん!いきたい!」
「楽しくなかったらごめんなー?さ、行くぜ」


道を間違わないよう、混雑した中でも目印を見つけて歩く。
そんな私に気付いてか、桐生は私を先導するように歩いてくれた。

煌めく街並みを、他愛のない会話をしながら進む。
お店のこと。桐生自身のこと。私自身のこと。
遥の質問攻めにあう私は、どんなに小さな質問にも答えていった。


「お姉ちゃん、好きな食べ物はー?」
「・・・桃が好きだ」
「そうなんだ!今度、おじさんと三人で桃のシャーベット食べに行こうよ!」


楽しそうな遥の声に、心から癒される。

桐生と三人で、か。
アイスを食べる桐生を想像して、ブフッと吹き出す。

見てみたいなんて呑気な事を思っていると、案の定桐生の不機嫌そうな声が掛かった。


「・・・何故笑う」
「いやだって、なぁ?アイス食べてる姿とか、なんか可愛いじゃん?」
「お前な・・・」
「おじさん、アイス嫌い?」
「い、いや、そんなことはない」


あの堂島の龍も、遥には敵わないようだ。
誰だって遥の笑顔を見れば、怒る気なんて無くなる。
そうこうしている内に宝くじ屋を見つけた私は、すぐに10万円を受け付けの人へ渡した。

受付の人は無言のまま、私の顔をじっと見つめる。
そして何かに気付いたように、宝くじ売り場の横にある壁を指差した。


「お久しぶりですね、あけさん。そちらへどうぞ」
「あぁ。さんきゅ」
「あんまりボロ勝ちしちゃだめですよ?」
「運が良ければ、勝っちまうだろ?」


私はこう見えても、賭け事には強い方だったりする。
もちろん、たまにはボロボロに負ける時もあるが。

私は二人を隣にある壁に案内し、立つように指示した。
何もない冷たい壁。そこが賭場への入り口。
何だろう?と首を傾げていた二人を、グルッと回る仕掛け扉が歓迎する。


「・・・!?」
「きゃ!?」


声を出さずに驚く桐生と、私にしがみ付いてくる遥。
私には見慣れた光景のため、二人の反応が楽しくてしかたなかった。
やっぱり仕掛け扉は、こういう反応を見られるから好きだ。


「へへ・・・すげぇだろ」
「こんな所に・・・さすが情報屋だな」
「こんなの、1番軽い方の情報だぜ?」


部屋の中に響き渡る、ジャラジャラというサイコロを振る音。
うるさいようで落ち着くその音に、私はとある一室の障子を開けた。
お客さんはまったく私達に興味を示すことなく、丁半に夢中になっている。

この部屋の中は、賭け事の世界。
子供連れの私達を見た壺振りが、少し意地悪い顔で口を開いた。


「お客さん、子供連れかい?」
「社会勉強さ・・・迷惑か?」
「別に。ですがここには、子供料金なんてありませんぜ」


相変わらず、上手い切り返しだ。
私は遥と桐生に座るよう促し、桐生が座った隣に自分も腰かけた。

さて、と。まずはルール説明からかな?
遥にルールの説明をしようとして顔を近づけた私は、遥の言葉に目を丸くするしかなかった。
壺振りの掛け声が掛かる中、遥の澄んだ声が響き渡る。


「さぁ、張った、張った!」
「丁!」
「・・・へへ、威勢のいい子だぁ」


私は無言で、遥の言う丁に賭けた。
元々お金が飛び交う街だ。少しぐらい負けても痛くない。

桐生も遥を信じるのか、丁に賭け点を入れている。


「丁半揃いました!勝負!」
「・・・・」
「ニロクの丁!」


掛け点をがっつり賭けていた私は、遥に向かってビシッと親指を立てた。
遥は嬉しそうに笑いながら、再びじーっとサイコロを見つめる。


「よござんすか?入ります!」


サイコロが壺に入るのを見届けると、遥が元気よく「丁!」と叫んだ。
もう一度、遥の言った丁に賭ける。
桐生も迷いなく遥の言った丁に賭け、壺が開くのを待った。

皆が賭け終わり、勝負の掛け声が上がる。
ゆっくりと開かれた壺の中は、遥の言うとおり丁のコマ数が揃っていた。


「グサンの丁!」
「おお、また当たりだ。すげぇな、遥!」
「えへへ!」 「フッ・・・才能があるのかもな」


振られるサイコロの音。
遥はまたうきうきと壺を見つめ、振られたサイコロに口を開く。

2連続ならまだしも、遥が賭けたのは3連続めの丁。
これで当たったら本当の才能だな、なんて冗談半分で思っていた私は、遥の運に本気で驚かされた。


「ニゾロの、丁!」
「すげぇ・・・」


それからずっと、遥の予想は当たり続けた。
・・・6連続、丁。
同じってのにも驚かせるし、それを当てる遥にも驚かされる。

丁度7回目を当てたとき、壺振りが席を外した。
ボロ儲けしてしまっている自分の点数を数え、思わず笑ってしまう。


「ひゅ~!遥のおかげでやばいぐらい稼いじゃった・・・!」
「楽勝だね!私、才能あるかも!」
「そうだなぁ」
「私のおかげで買ったんだから、何か奢ってよ?」


遥のちゃっかりした言葉に、私と桐生は顔を見合せた。
やっぱり普通の子供とは違う何かが、遥にはあるみたいだ。

威勢も良いし度胸もある。
将来は良いお姉さんになるに違いない。


「いやぁ、お待たせしました。歳のせいか小便が近いもので・・・」


壺振りは急ぎ足で席に戻ると、再び掛け声と共にサイコロを振った。
遥はそれを、見逃さないようにじーっと見つめている。
そしてサイコロが壺の中に入ったのを見てから、遥がぐいっと私の腕を掴んだ。


「次はねぇ・・・半!」
「お?半にするのか?よーし、じゃあ半で!」
「俺も半だ」


持ち点もかなりあるため、大胆に1000点賭ける。
どうせ当たりだろうと思っていた私は、開けられた壺の中を見て頭を掻いた。

さすがに、運も尽きたか。
壺の中に転がるサイコロは、さっきまで賭けていた丁のコマを出していた。
賭け点を引かれてしまったが、切り上げる良いタイミングになったかもしれない。


「せっかく儲けたし、そろそろ帰ろうか?」
「あぁ、そうだな」


賭け事は熱くならず、儲けた時が1番の止め時だ。
もっと行ける!って思ってやればやるほど、最後には損だけになるから。
私の提案に賛成した桐生が、ゆっくりと席から立ち上がる。

何だか、嫌な予感がするんだけどね。
後ろから怪しい男が近づいてくるのを見て、私は深いため息を吐く。


「お座りいただきましょうか、お客人」
「・・・気安く触るな」


肩を掴まれた桐生は、二人の男を簡単に放り投げた。
放り投げられた男は壺振りに激突し、苦しそうな声が上がる。

突然の騒ぎに客は怒り、賭場は騒然とした空気に包まれた。
壺振りが怒って桐生を止めるが、その声に混ざって機械音が響き渡る。
なんだ、この音。規則的に何かが動いてるような。


「おじさん、これ・・・」
「あっ・・・」


遥の手に握られた、気味の悪いサイコロ。
それは規則的な機械音を響かせ、手の上で妙な動きを繰り返していた。

全ての面から小さな鉄の棒が出ている・・・・どうやら、イカサマ用らしい。


「随分と変わったサイコロだなぁ」
「ふ、ふざけやがって・・・」


飛び交う、イカサマに対する怒りの声。
慌てた壺振りは用心棒を呼び、私たちの方を指差して叫んだ。


「イ、イカマサだ!つまみ出せッ!」
「「「はぁ?」」」


見事に三人の声がハモり、挑発に乗った用心棒たちが襲い掛かって来た。
遥は怯えるどころか、自ら避難して私たちの方を笑顔で見ている。

今までの奴に比べたら、確かに怖くないのかもしれないけど。
悪い奴はやっつけちゃえ!っていう口の動きが見えて、私は遥の強さに苦笑いを浮かべた。


「うおっと!?」
「まず女を狙え!男は後だ!」
「おいおい・・・ナメてくれるじゃねぇか」


用心棒たちの一撃を、受けるのではなく受け流していく。
触れる直前でかわしていくだけ。
それによってバランスを崩した男達に、容赦ない足技をお見舞いさせる。


「ハッ・・・口ほどにも・・・」


また襲い掛かって来た男を避けようとした瞬間、壁が私の逃げ場を遮った。
すっかり部屋の中だってことを忘れてた私は、そのまま男の拳を受ける。

こいつ、やってくれやがって。
頬を押さえて睨み付ける私を、男は楽しそうに見て笑う。


「良い眺めだな」
「てんめぇ!」


私が殴る必要もなく、男は桐生にぶっ飛ばされた。
何か桐生がいつもよりイラついてるような気がしたけど、気のせいか?
男達は次々と桐生によってなぎ倒され、悲鳴を上げて逃げ去る。

あっという間に、残るは壺振りただ一人。
壺振りは怯えた様子で私達を見ると、恥を捨て去って頭を下げた。

























平和の訪れない街で、疲れ果てて眠る少女
(騒ぎに疲れて眠ってしまった遥を送り、私は静かに花屋と挨拶を交わした)
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