Erdbeere ~苺~ 彼女の龍“ナイト” 忍者ブログ
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2011年11月20日 (Sun)
桐生さん落ち/秋山さん・真島の兄さん・龍司さん
ギャグ甘/ヒロイン視点/若干秋山さんが押し強め
※ot the end軸のため、ソンビやグロ表現あり

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こんな状況を、信じられる人がいるのなら出てきて欲しい。

私はただ遥と一緒に、ひまわりに行くだけ。それだけだったはずなのに。


「くっそ・・・!遥・・・!」


遥は誰かに奪われてしまった。私のせいで。
そのことを桐生に伝えたくても、携帯の電池も無ければ体力も無い。
襲ってきたゾンビに銃弾を浴びせた私は、必死に無事なお店や建物を探した。

一体、こいつらは何なんだ?

ゾンビなんて、怖くて映画でも見たくないレベルだ。

でもそれが実際、今目の前にいる。
人間を食い漁って次々と感染させて・・・まるで、映画の中の世界。
信じたくなくても信じるしかない状況に、私は手元の銃をしっかり構えた。


「どうしろってんだよ、クソッ!」


たとえこの筋で働いていたとしても、銃の使い方に長けているわけではない。
下手な鉄砲数うちゃ当たる方式で戦ってきた私は、少しずつ銃を使いこなせるようになっていた。

人間、窮地に立たされたらなんでも出来る、ってことか。
私はそこまで強くなんだけどな。今だってまだゾンビが怖くて震えてる。


「ヴァァ・・・アァァァ・・・」
「ひっ!まじで、勘弁してよ・・・!」


情けない声を上げながら、現れたゾンビに背を向けて逃げ出す。

もうどれだけ走ったか分からない。どれだけ人が死ぬのを見たのかさえも。
私が普通の一般人だったら、まず精神から崩壊していただろう。
だがあいにく、私は普通の道を生きてきた人間じゃない。


まさか、こんなところで極道の道に感謝することになろうとは。
苦笑しつつも、まだ生きた人間に会えてないことに対する疲労は隠しきれなかった。


「どこ見てもゾンビばっか・・・。生きた人間に会わせてくれよ、ほんと」


逃げ道を塞ぐゾンビを、片っ端から銃で撃ち殺していく。
ゾンビ達は死を恐れることなく銃弾を受け、灰色の世界に赤い血の跡を残した。

血生臭い匂いに、吐き気を覚える。
銃をリロードするために安全な場所へ駆け込んだ私は、ソンビの居ない裏路地の奥の方へ足を進めた。

しかし、それが間違いだったのだ。


「ガヴァ・・・!!」
「なっ・・・!?」


裏路地の方から降ってきた、自衛隊の恰好をしたゾンビ。
ゾンビが居ないと安心しきっていた私は咄嗟に銃を構えることが出来ず、痛みを覚悟して後ろに思いっきり身体を転倒させた。

ガンッと頭の中で鋭い音が響き、自分がコンクリートで頭を打ったことを知る。
そんな私を見て、ゾンビは嬉しそうに手を広げて襲い掛かってきた。
頭から血が流れているのが分かる。もう、動けない・・・。


「おぉ、まだおったんか!」
「・・・!?」


助からないと覚悟を決めていた私は、後ろから聞こえてきた声に思わず笑みがこぼれた。
鋭い銃声が聞こえ、私を襲おうとしていたゾンビが一瞬で肉片と化す。

そして私の方へ歩いてきた人物は、普通の一般人よりはるかに心の支えとなる・・・アイツだった。


「兄さん・・・」
「よぉ、あけちゃん」
「やっほう・・・元気そうで何より!」


真島の兄さんとは、桐生に会うより前からの付き合いだ。
情報を売っていたというのもあるが、何故か気に入られ、よく二人で遊ぶようになったのが理由だ。

こんな状況でも、楽しそうにしている兄さんはさすがというべきか。
兄さんが差し出してくれた手を支えに、私はゆっくりと立ち上がる。


あけちゃん、こないところまでずっと一人やったんか?」
「あぁ・・・。遥奪われちゃって、そのままデカイ化け物に襲われて・・・ワケが分からないまま、ずっと逃げてたんだ」
「大変やったなぁ・・・もう大丈夫やで。わしがおる」


その一言は、疲れていた私の心を一瞬で癒してくれた。
肩をぎゅっと抱きしめられ、抑えていた感情が溢れ出す。


「・・・震えとるやないか・・・」
「さすがに、私でもゾンビは無理だぜ・・・」


まぁでも、さすがに引き下がろうとは思わない。
私は銃のリロードを済ませると、もう一つ地面に銃が落ちていることに気がづいた。
この銃、ぼろぼろだがまだ使えそうにも見える。
二刀拳銃なんて扱える気はしないが、数戦法の私にとっては貴重な銃だ。


「これからどうするんや?」
「逃げ場所っていうか、避難場所とかねぇのか?」
「あぁ、それやったら、賽の河原に行くとええ」
「へぇ・・・あそこは無事なのか。あそこがやられてたら自ら死ににいくようなもんだと思って、行かなかったんだけど・・・」


河原は地下にあるため、ゾンビがいれば飛び込んでそこで終了になる。
そのため避けて通っていたのだが、無事を分かればそこが1番安全だろう。
希望を得た私は頭の血を拭いながら立つと、兄さんに笑顔でお礼を言った。


「ありがとなっ!」
「な、なんや・・・そんな笑顔で言われたら、調子狂うやないか・・・」


兄さんが照れくさそうに笑いながら、私の肩をトントンと叩く。


「ほないっちょ、わしが連れてったる」
「連れてったる・・・っていうけど、兄さんも避難しないと危ないんじゃ?」
「・・・・」


そう言うと、兄さんは何故か複雑な表情を浮かべた。
寂しそうに目を細め、静かに目線を左腕へと移す。


「・・・っ!そ、の・・・傷は、もしかして・・・」


私の目の前に突き出された腕には、ゾンビから受けたと思われる傷があった。
もし噛まれていたとしたら―――――――結末がこの町の惨事と重なり、冷や汗が頬を伝う。
でも、どうして?兄さんほどの人がどうして・・・?


「だからあけちゃんとは・・・行けんのや」
「にい、さん・・・」


色々喧嘩したり、遊んだり、忙しい仲だった兄さん。
こんな所で兄さんを失うということが、今の私には理解出来なかった。

自然と、涙が流れ落ちる。
無力な私には、何もしてあげれない。それが悔しくて。


「泣くなや・・・あけちゃん」


流れ落ちた涙を、いつの間にか私の目の前に来ていた兄さんが舌で掬った。
そのまま涙を味わうように、ねっとりと舌を這わせられる。


「だって、兄さん・・・私・・・」
「うるさいのぉ・・・泣くな、言うてるやろが」
「あ・・・!」


グイッと強引に顔を上げられた先には、いつになく真剣な兄さんの表情があった。
滅多に見れない表情に、不覚にも顔が赤くなっていくのを感じる。
逃げようにも、顔を固定されていて逃げられない。


「目ぇ、閉じとけよ」
「っ・・・」


キス、される。

桐生が知ったら激怒しそうだが、今の私に抵抗や逃げ出すことは出来ない。
いつもおちゃらけて、楽しそうにしている兄さんが、いなくなってしまうなんて。

兄さんの顔が近づいてくる。私は覚悟を決めて目を瞑―――――――


「おっと、わりぃ!」
「だぁ!?」
「へっ?・・・うぎゃあ!」


静かな空間に、銃声と悲鳴が響き渡ったかと思うと、兄さんの背中にゾンビの死体が投げつけられていた。
兄さんが怒りに震える中、ゾンビを蹴り飛ばした本人が笑いながら謝る。


「いやー、悪いねぇ~。わざとじゃないんだけどさ」
「秋山さんじゃん。お前も無事だったんだな?」
あけちゃんも無事なようで何よりだ」


突如現れた秋山さんも、兄さんと同じでいつも通りの表情を浮かべていた。
今まで切羽詰っていた自分が馬鹿らしく感じる。まだまだ私も修行が足りないらしい。

まぁ、コイツらが異常な奴らってだけなのかもしれないが。
そんな失礼なことを考えていると、ゾンビに吹き飛ばされた兄さんが頭を押さえながらゆっくり起き上がってきた。
怒ってはいないようだが、物凄く残念そうな顔をしている。

「抜け駆けはよくないですよ?真島さん」
「チッ・・・・」
「・・・・?」


状況が良くつかめず、私は二人の様子に疑問符を浮かべた。
それに気づいた秋山が、私の頭をポンポンと叩く。

こいつとは情報とかではなく、純粋に桐生との仲で知り合ったやつだ。

時々花ちゃんに頼まれて、集金の手伝い(という名の監視)をしたり、暇な時の食事相手になったり・・・。
腕っぷしが強いのは知っていたが、この様子だと銃も使いこなしているようだ。


「化け物だな、お前ら」
「そりゃないやろあけちゃん!」
「いやだって・・・」
「俺だって好きで銃使ってるわけじゃないんだぜ、あけちゃん」


苦笑する秋山さんに、私もつられて苦笑を浮かべる。
確かにこの状況を楽しんでるのは、真島の兄さんぐらいだろう。


「っと・・・まず、こっから動くとしようぜ」
「そやなぁ・・・あけちゃん、避難する前にきちんと物資類は自分で調達しとかんと、河原もそこまで物資があるわけやないで」
「そうだな。真島さんと俺だけだった時よりも、今は人数が増えて相当物資も厳しいだろう・・・ついでに、調達して帰るか」


秋山さんの「ついで」という言葉に、私は首を傾げた。


「そういえば、何で秋山さんは隔離エリアに?」
あけちゃんが隔離エリアに居るって情報を聞いて、出てきたんだよ」


なるほど、花屋さんか。
ライバル情報屋の顔を浮かべた私は、いつも取引相手としてお世話になってる恩返しをしようと、二刀拳銃を構えた。

その様子を見た秋山さんが、嬉しそうに声を上げる。
お揃いだねって喜ぶ姿が子供みたいに見えて、思わず吹き出してしまった。


「秋山さん、子供みたいだけど?」
「おいおい・・・お前さんみたいな子供に言われたくないな」
「なに~!?」


怒る私に、先ほどとは違う大人の余裕を見せつける秋山さん。
むかついて言い返そうとする私の肩を止めたのは、意外にも兄さんだった。
兄さんは無言で私を窘めると、私たちの後ろの方をゆっくり指差した。

嫌な予感がする。ものすごく嫌な予感だ。
私は後ろを振り返って確認することもせず、構えた銃を後ろに向かってぶっ放した。


「ガ・・ァァ・・・」
「ひゅーう、やるねぇ・・・」
「さっさとお前も戦え!」
「・・・言われなくて、もっ!」


私が振り返りざまにぶっ放した銃弾は、見事にゾンビの額を撃ち抜いていた。
周りを見渡せば、今まで静かだった裏路地がゾンビで溢れかえっている。

こんなところで立ち話をしていても始まらない。
兄さんは河原に行かないということで、物資調達をしにいく私たちとはここで別れることになった。


本当に、兄さんみたいな人がゾンビになっちゃうんだろうか?

楽しそうにゾンビをなぎ倒す姿を見ながら、私は秋山さんと共に物資があるお店へと急ぐことにした。


「兄さんっ!」
「あ?」
「・・・またね?」
「・・・おう」


最後の別れにならないよう、お互いきっちりと挨拶を交わす。
顔見知りのメンバーと会えたせいか、さっきより体が軽くて動きやすい。


「ガヴ・・・アァァ・・・」


裏路地から走り去る私たちを、複数のゾンビ達が追いかけてくる。
私は相変わらずの数戦法で拳銃をぶっ放し続け、ゾンビ達の血や肉片が飛び散る度に吐き気を覚えた。

真島の兄さんは違うとしても、秋山さんだって実際は精神的にキテる部分もあるだろう。
飄々とした表情でリロードする秋山さんに、私はそっと近づいた。


「・・・お前、大丈夫かよ?」
「ん?俺は平気だよ?どうしたのよ、急に」
「いや、お前も滅入っちゃってねーかなって」


私の言葉に、少しだけ秋山さんの表情が変わる。


「心配してくれてるの?嬉しいねぇ」
「・・・・まったく、読めないやつ」


微かにゾンビの声が遠くなるのを聞いて、私は深いため息を吐いた。
銃をいつでも取り出せる場所にしまい、崩壊した街の中に使えそうなお店がないか探す。

とりあえず、少し奥の所にあるスーパーみたいなところが使えそうだ。
ゾンビに見つかる前に早くお店に入りたかった私は、特に何も言わず秋山さんを無理やり引っ張ってお店へと走った。
















ウィン。

鈍い音を立て、自動ドアがゆっくりと開く。
うん、商品的に無事なものが多い。ここなら物資も揃うだろう。


「秋山さーん?必要な物資、集めちゃおうぜ!」


秋山さんを引っ張っていた手を離し、私は店を物色しようとする。
だが、それは秋山さんによって阻まれた。

放したはずの腕を思いっきりつかまれ、危うく倒れそうになったところを秋山さんが抱きかかえるように助けてくれる。


「あ・・・あぶねぇだろ!」
「・・・・」
「あき・・・やまさん?」


無言のまま、秋山さんは動かない。


「秋山さーん?」
「ねぇ、あけちゃん」
「ん?」
「ちょっとさ・・・俺のこと、呼び捨てで呼んでみてよ」
「・・・はっ?」


秋山さんを、呼び捨て?
突然のお願いに、逃げられない私は秋山さんから顔を逸らす。

いつもは飄々としている秋山さんが、真面目な表情をして私を見ていたからだ。

な、なんだってんだよ一体?
私はそういうのが苦手なんだ。桐生と子供達ぐらいしか呼び捨てにはしない。
それ以外は、ほとんどニックネームとかだ。


「どうしたの。呼んでくれるよね?」
「え・・・いや、あの、別にさん付けでもよくね?」
「いやー。結構これでも色々遊んでる仲だろう?それなら親しみの意味も込めて・・・ねぇ?ダメとは言わないよね?あけちゃん」


かなり強引に、秋山さんが顔を近づけてくる。

まるでキスされそうな位置だ。
恥ずかしくなって顔を逸らしても、すぐに秋山さんが顔を掴んで目を合わさせる。


「ちょ、ちょっと・・・!おい、何だよ・・・!?」
「人の女に手を出す趣味は無かったんだけどね・・・あけちゃんのせいだよ?責任取って、呼んでくれるよね?」
「ま、待てって!」
「いーや。待たない。今まで俺は散々待たされてんの」
「はぁっ・・・!?」


慌てふためく私を見て、秋山さんの表情は楽しそうだ。

むかつく。むかつくけど大人の余裕とやらでやり返すチャンスが無い。


「さ・・・早く、ね?これでも俺、手加減してあげてるのになぁ」
「何言ってんだよ!は、早く物資を・・・!」
「呼んでくれないなら・・・キス、しちゃうけど?」


冗談やめろ、と言おうとした口が、あっけなく塞がれる。
桐生とする時みたいに深いキスじゃないとはいえ、身体の力が抜けるには十分すぎる口付けだった。

がくっと腰から倒れそうになる私を、また秋山さんが支える。
本当にむかつくやつだ。大人の余裕ってのが見え見えで。


「てんめ・・・っ!その余裕の表情やめろ!」
「ん、惚れちゃった?」
「ちげぇよ!」


顔を真っ赤にしてるのも、きっと彼にはバレバレだろう。
私はついに観念し、秋山さんを呼び捨てで呼ぶことにした。


「あき・・・やま」
「え?何々?聞こえなかったんだけど?」
「くっ・・・こいつ・・・!」


一度言ってしまえばこっちのもんだ。
口を大きく開け、これ以上良いようにさせないよう、恥じらいの表情を捨てる。


「秋山っつってんだよ!秋山っ!」
「おおーう・・・あけちゃんに呼ばれると、また違うねぇ・・・。ゾクってしちゃうよ」
「うっせ!馬鹿なことぬかしてないでさっさと・・・」


物資を探そう。
その言葉は、1発の銃声によって阻まれた。
慌てて店の外に目をやると、そこには懐かしい顔の男がいた。

昔会ったことがあるとはいえ、敵として会ったことがあるだけだ。
今はどうなのか知らないが、状況的に敵か味方を判断している暇もなく、私は秋山さんを突き飛ばして店の外に叫んだ。


「おーい!龍司さーん!」
「ん?おう、あけやないかい」


一瞬秋山さんと龍司が睨みあったのに気づかず、私はそのまま龍司の元へと向かった。
右腕が偉くごっついのになってるけど、それは気にしないことにする。


「お前、生きてたんだな・・・」
「・・・まぁな。それで、あけは何しとんのや」
「ん?秋山さん達に助けてもらって・・・ついでに、物資補給ってところ!」
「なるほどのぉ・・・」


比較的綺麗な店内を見回した龍司は、ゆっくりと頷きながら私の肩を叩いた。


「そないことなら、手伝ったるわ」
「ほんとか?さんきゅ!」


物資といえど、自分達の以外のものも少しは買う予定だった私は、龍司の手助けを素直に受け入れた。

龍司が前より性格が丸くなって見えるのは、どうやら気のせいじゃないらしい。
じっと表情を見ていたら分かる。桐生達と敵対していた時とは全然違うことが。


「水と食料と・・・私は携帯の充電のやつもちょっともらっておくか」
「(ちぇっ・・・あともうちょっとだったのによ・・・)」
「おーい、秋山!お前もさっさとしろ!河原へ急ぐぞ!」
「・・・・しょうがないねぇ」


ん?なんかサラッと呼び捨てしちゃった気もするけど、いっか。

私は袋にありったけの水や食料を詰め、それを龍司へと渡した。
私が引きずるように持っていた物資袋を、龍司は簡単に片手でひょいっと持ち上げる。

「おう、もう1個持てるで」
「お、お前・・・やべぇな・・・んじゃあ、龍司さんには持ってもらって、秋山さんに護衛してもらうって感じでいいな」


いいよね?と確認を取るように振り返ると、秋山さんが不機嫌そうな顔をしていた。
不機嫌な理由が嫌でも分かってしまった私は、またさっきみたいなことにならないよう、すぐに言い直す。


「秋山、護衛頼んでいいよね?」
「イエッサー」


こんなんで嬉しそうにする秋山さんが、私には良く分からない。
本当に読めない奴だと私がため息を吐くと、後ろから龍司がポンポンと頭を撫でてくれた。


「・・・ん?龍司さん?」
「・・・・」


な、なんだろう。
何か猫か何かのように思われてる気がする。


「りゅ、龍司さん?」
「おう。俺のことは龍司でええ」
「あ、うん・・・?」
「昔は世話になったなぁ・・・色々と」


龍司と会ったのは敵対していた時だったが、キャバで情報集めをしてた時に遊んだのを思い出した。
若いだけに荒れてる感じがあった龍司だけど、今ではその様子もない。

きっと、大人になったってことなんだろう。
龍司より子供の私が思うのも、おかしな話だけど。


「よーし。まぁ、こんな感じでいいだろ」
「さんきゅー秋山!龍司!じゃ、河原に行こうぜ!」
「おう!」


すんなり龍司を呼び捨てにした私を、秋山が不機嫌そうに見ていた。
でもしょうがない。龍司は秋山と違って変なこと言ってこなかったし。

誰だって、呼ばなかったらキスするとか言われたり、呼び捨てにして?って迫られたら恥ずかしいに決まってる。

私たちは荷物を持ってくれている龍司を守りながら、慎重に道を選んで河原の方へと向かった。


「そういや、あけ。良く今まで生き残っとったな」


龍司の言葉に、私は苦笑を浮かべる。


「死にそうだったけどな、精神的に」


一人で過ごしてきた時間を思い出し、身体をぶるっと震わせる。
それに気づいた龍司が、大丈夫やと優しく頷いてくれた。

私にこんなところで弱ってる暇はない。
今は早く体力を回復させて、遥を助ける準備をしなきゃいけないんだから。


「秋山ー。河原はまだー?」
「ん?ここを曲がった後の広場に、確かあるはずだ」
「りょうか・・・」


ピピピピピ。

了解!と返事をしようとした私のポケットから、携帯の着信音が鳴り響いた。
そういえば、さっきのお店から携帯充電器を貰って、充電しておいたんだった。

慌てて携帯を取ろうとしたところに、空気を読まないゾンビが一人。
私は反射的に携帯を放り投げ、襲ってきたゾンビに拳銃をぶっ放した。


「大丈夫か?あけちゃん!」
「おう!なんとか!」


ゾンビのせいで、携帯を取り損ねてしまったらしい。
まったく、本当に空気を読まないゾンビ達だ。


「っと、携帯携帯・・・!」


もう鳴り響かなくなった携帯を急いで拾い、その場で受信履歴を確認する。
そしてそこにあった名前を見た私は、遠ざかり始めていた二人の背中に声をかけた。


「秋山!龍司!わりぃ、先に行っててくれ!」
「お、おい、どうしたんや!」
「ちょっと・・・大事な電話が来たんだ」


不思議そうにする二人を置いて、私は銃を構えながらバリケードの方へと急いだ。

携帯電話の履歴にあった名前。
桐生一馬・・・きっと、アイツが来たんだ。

きっと、遥を攫った奴から連絡が言ったんだろう。
遥を攫うやつは、大体桐生に何かしら用があるやつばっかりだからな。


「桐生・・・!」


遥を奪われた申し訳なさと同時に湧く、彼に一刻も早く会いたい気持ち。
私はゾンビの群れを掻い潜り、必死に正面ゲートを目指して走った。

アイツのことだ。絶対この正面から来る。
その予想は見事に的中し、目の前の正面ゲートが轟音を立てて崩れた。
ゲートを突き破ってきた人物は、目の前のゾンビにまったく恐怖の色を見せない。


「(さすがっていえば、さすがなんだけどさ・・・)」


もう人間じゃねぇよアイツ、と心の中で失礼なことを思っていると、桐生が突然群がってくるゾンビを素手でなぎ倒し始めた。

予想の斜め上を行きまくる桐生を、これ以上に恐ろしいと思ったことは無い。


「・・・・!桐生ッ!」
「っ!」


ゾンビを素手で殴り倒す桐生の後ろに、新たなゾンビが襲いかかろうとしていた。
それを見た私は咄嗟に桐生を呼び、そのゾンビに向かって銃弾を放つ。

ゾンビに噛まれた者は、感染してしまう。
そんなことは絶対にさせない。私が、絶対に。


「桐生、頭下げろっ!」


桐生がいくら強くとも、数多きゾンビには処理しきれない。
私は桐生が囲まれてしまう前に周りを片付けてしまおうと、桐生に当たらないよう銃弾をぶっ放した。

桐生に襲い掛かろうとしていたゾンビ達が、私の銃弾を受けて次々と倒れていく。
撃つ感触になれない私は、ある一定のゾンビを処理しきったところで桐生の元へ向かった。

どうせ戦い続けてもゾンビは減らない。
なら今は、桐生と合流して安全な場所へ逃げるのが先だ。


「桐生っ・・・!」
あけ・・・!無事で、よかった・・・!」
「感動の再会は、あとにすんぞ!」


ホッとした表情を見せる桐生を、私は有無を言わさずその場から引っ張って走り出した。

一旦この先の裏路地に逃げ込んで、ゾンビの群れをかわそう。
銃を使おうとしない桐生に苛立ちつつ、それでも走る足は止めない。


「!ここなら・・・!」


必死について来ようとするゾンビを銃で遠ざけながら、何とか私達は静かな雰囲気の裏路地を見つけて足を止めた。


「はぁっ・・・はぁっ・・・」
「っ・・・・」


全力で走ったり銃を撃ったりしたせいか、全身の疲れが酷い。
疲れ切って座り込んでしまった私を、桐生が静かに抱きしめる。


「桐生・・・ごめんな、私のせいで遥が・・・」
「お前が無事だっただけ良かった。まったく・・・心配かけさせるな」


誰よりも安心する、桐生の声。
桐生は私の持っていた銃を睨み付けると、私の手ごと銃を握りしめた。


「お前がこんなもん、使うところは見たくねぇ。これは俺に・・・」
「嫌だ!」
あけ・・・」


銃のことを見て、桐生が何か言うのは分かっていた。
危険だとか、そんなもの使うなとか、でもそれを分かっていて私は銃を握り返す。


「拳とかじゃ、もうどうにもならないんだよ・・・私は無力で、だから遥を取られた・・・・」
「・・・・」
「目の前で色んな人が死んだ。私は、何も出来なかった・・・っ!」


秋山や兄さん、龍司と会うまではずっと一人だった。
目の前に居た生きた人間さえも救うことは出来ず、出来たことは自分の身を守ることだけ。

情けなさ過ぎて、涙が溢れ出る。
その涙を、桐生は優しく舌で掬いとってくれた。


「桐生・・・」
「分かった。だが、無茶はしないと約束してくれ」
「うん・・・大丈夫。無茶はしねぇよ。私は桐生と皆を守るためにだけ、動く!!」


1匹だけ迷い込んできたゾンビに気付いていた私は、話しながら銃の引き金を引いた。
鋭い音が響き、ゾンビがぐちゃりと嫌な音を立てて倒れる。

自分では震えてるけど、実は銃の使い方に慣れてきているのかもしれない。
いや・・・慣れてるというか、感覚がマヒしてきたというべきか。


「・・・・あけ。出来るだけお前が撃たないように、俺が守ってやる」
「ありがとう・・・・」


お礼を言うと、クイッと顎を持ち上げられた。
キスされる!と目をつぶった所で、桐生のポケットから着信音が響き始める。

桐生はものすごく不機嫌そうにその電話を見ると、着信相手を見てもっと不機嫌そうな顔になった。

だ、誰からのメールだったんだろう?なんか表情がやばい。


「・・・・おい」
「は、はい!」


メールを見終わった後、やけに殺気染みた声で呼ばれたため、思わず敬語で返事してしまう。
私に掴み掛るんじゃないかってほど凄い顔で、びしっとメールを見せつけられた。

そこに書いてあった内容と差出人に、私は顔が引きつるのが分かった。



『桐生さん、もしかして今、あけちゃんと居ます?
河原は無事ですから、一緒に避難しにきてください

あと、さっきの続きしたいんで、早くあけちゃんをご返却願います』



「秋山ァァァ・・・!!」


怒りに震える私を無視して、桐生はメールの内容について問い詰めてくる。
くっそ、まじアイツ!嫉妬深い桐生に適当なこと言うなっつうの!


あけ・・・?これはどういうことだ・・・?」
「ひぃっ!?」


嫉妬に震える桐生が、メールの内容に誰もが逃げ出すであろう表情で私を睨み付けた。

桐生を嫉妬させた時の恐ろしさは、この身体にたっぷりと教えられている。
私はどうこの場を切り抜けるか考えつつ、聞こえてきたゾンビの足音に、恐怖ではなく喜びを覚えた。


「き、桐生!ゾンビがきた!とりあえず河原に逃げるぞ!」
「待てッ!話は終わってないぞ!!」
「こわ、怖すぎる!怖すぎるから落ち着けってー!秋山が悪いだけで、私は何もしてねぇー!」


ゾンビから逃げる私と、その後を追ってくる桐生。
襲いかかろうとするゾンビは全て桐生のパンチや蹴りに沈み、追掛けられている私は悲鳴しか上げることが出来なかった。


あけ・・・!お前秋山とどういう関係だ!おい!」
「ち、違うっ!これは秋山が勝手に調子のって色々しやがったせいで・・・!私は無実だっ!」
「よほど仕置きされてぇらしいな・・・?」
「っ!?ゾンビよりお前の方がこえぇよ!落ち着けよ!」
「断る!」
「ゾンビさんちょっと!アイツを止めろぉぉぉおおぉぉ!」















「よぉ、桐生。無事だったんだな」
「あぁ・・・。花屋さん、ちょっと空いてる部屋借りれるか?」
「あ?あぁ。それならあっちの部屋が空いてるぜ」
「分かった」
「(なんかあけが担がれてた気がするが・・・まぁ、気にしないでおくか)」



















こりゃあ、奪うには相手が悪すぎるみたいだな・・・?
(モテモテの彼女を守るのは、嫉妬深い龍の男)
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見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)